エア・ウォーター・ゾル株式会社 研究開発本部 本部長兼執行役員 鈴木 昇様
設立:2007年7月 (創立1951年:東京スプレー研究所)
事業内容:エアゾール事業・化粧品事業のODM/OEM
従業員数:645名(2021年3月31日時点)
拡大する化粧品市場、エアゾールの知見を活かして参入へ
――始めに、会社の概要を教えていただけますか。
元々はエアゾール充填会社からスタートし、約70年の歴史がある会社です。現在は「化粧品・医薬部外品」「家庭用品」「塗料」「工業・自動車用品」等、様々な産業の製品を製造させていただいている、受託製造(ODM)会社です。その中で化粧品事業は2015年から市場進出に向けて取り組みがスタートし、現在に至ります。
――化粧品市場に参入した背景を教えてください。
2015年以前から化粧品市場は成長が続いていました。特に中国からの観光客を中心にインバウンド需要が高まっていて、化粧品市場はこれからも成長し続けるだろうと考えていました。
また、もともとエアゾールタイプの化粧品を扱っていたので、化粧品についての知見も持ち合わせていました。少し化学的な話になりますが、エアゾールは物理化学・界面化学・機械工学など様々な専門的な知識を必要とする分野であり、化粧品の乳化物を作るのにそれらを応用することができます。化粧品市場は技術的にも参入しやすかったんです。
――鈴木さんは現在どのようなお立場でしょうか。
現在は研究開発本部の本部長を担当しています。
研究部門の責任者としてのミッションは、研究に関わる業務・マネジメントです。具体的な研究技術はメンバーが推進していますが、方向性や組織運営のあり方を考えたり、サプライヤーさんなどの外部との窓口になったりしています。
他には人材育成にも関わっていまして、ネオマーケティングさんに協力してもらっている「マーケティングプロジェクト」などを主導しています。
現場の社員にマーケティングを学ばせ、顧客とエンドユーザーの両方について考える力を身に付けさせる
――改めて弊社に依頼いただている内容について教えてください
新入社員の育成プログラムの一つに「マーケティングプロジェクト」というのがあります。これは入社半年後から2年間、月1~2回の頻度で実施している新人研修です。ネオマーケティングさんにはその一部のプログラムを2015年から継続してお願いしています。
約5か月間、全10回のカリキュラムになりますが、前半は「3C」「4P」「4C」といったマーケティングの基礎を学ぶ座学で、後半ではリサーチを実際に体験してもらう内容です。例えば調査設計において、リサーチ課題やターゲティング、セグメンテーションの設定から、仮説、N数、質問項目、結果の想定、インタビュー、実査、まとめ、考察等、一連の流れを体験し理解してもらっています。
我々の顧客であるブランドメーカーが当たり前に行っている消費者調査を体験して、リサーチ結果を読み込み、エンドユーザーについての理解を深め、エンドユーザーにとっての価値を考えて、それに基づいて顧客に企画・提案できるようになることが最終ゴールだと考えています。
プロジェクト発足当時は、マーケティング=ブランドメーカーの広告や調査といったレベルの理解しかなく、弊社のようなBtoB企業にマーケティングは必要なのかと懐疑的でした。そのため、ネオマーケティングさんに弊社における現状課題、講義目的を相談しながら、ゼロからプログラムを作りあげてきました。
マーケティングの考え方は、どのような業態でも活用できる
――マーケティングの必要性が業界で浸透していなかった中で、何故このようなプロジェクトを開始しようと考えられたのでしょうか。
受託製造という業界としてはあまり理解されていませんでしたが、マーケティングの考え方はBtoB、BtoCに限らず、あらゆる場面で活用できると考えています。
社内では「マーケティング思考」と呼んでいますが、ネオマーケティングさんに実施してもらっている講義は、一般的な「マーケティング講座」ではなく、『マーケティングの考え方(思考)』を育てるための講義内容になっています。
――鈴木さんが考える「マーケティング思考」とは、具体的にどのような考え方ですか
弊社は受託製造業ですので、直接の取引先である顧客と商品を購入して使うエンドユーザーの両方にそれぞれにとっての価値を提供する必要があります。その前提となる思考を意味しています。顧客にもエンドユーザーにも価値を感じていただかないと商品が売れ続けることはできません。
では、エンドユーザーにとっての価値を理解するにはどうすればいいか。そのためには、日々エンドユーザーのことを考えている顧客の仕事内容を学ぶ必要があります。顧客の仕事内容を学ぶことで、エンドユーザーと顧客の両方にとって価値のある提案を行なえるようになると考えています。
――BtoBの場合、普段の業務だとそこまで考えが及ばない気がします
目の前の仕事は顧客のための仕事であり、その先のエンドユーザーのことまでは、意識しないとなかなか考えが及びません。
弊社はOEMだけではなくODMとして、色々なブランドメーカーの製品を作らせていただいているため、我々がデザインした製品の価値を、顧客に認めていただく必要があります。認めていただくには、やはりエンドユーザーにとって価値のある製品を提案する必要があるんですよね。
かのドラッカーさんが「セールスはいらない。お客さんが求めてくるように活動するのがマーケティングだ」というように、マーケティングの本質はそこにあり、また「BtoBtoC」という言葉があるように、マーケティングは我々のような業界でも学ぶべきだと考えています。
他に類をみない、マーケティングの実行機能を兼ね備えたリサーチ&マーケティング会社
――ネオマーケティングに対する印象をお聞かせください
マーケティング機能を兼ね備えたリサーチ会社という印象を持っています。所謂リサーチ会社は、言葉通り業務範囲はリサーチに留まりますが、ネオマーケティングさんはマーケティングについても知見があり、実際にお願いしている講義など、対応範囲が多岐に渡ります。そのようなマーケティングに精通したリサーチ会社は他にないと思っています。
また、ネオマーケティングさんのホームページに掲載されているリリースを見ても幅の広さが垣間見えます。トレンドに合ったお題・データの内容・設問内容などが商品を企画する人にとって非常に有用なアウトプットだと思い、定期的に読んでいます。
――ネオマーケティングに今後期待すること・ご相談などをお聞かせください
現在お願いしているマーケティングプログラムとは別に、デジタル領域における「質的な成果指標」を加味した費用対効果の測定について相談したいと思っています。デジタルマーケティングの費用対効果の分析から、課題の抽出、その後の改善施策まで実施できるのが理想ですね。
――最後に、今後の展望についてお聞かせください
化粧品事業を展開したとはいえまだまだ発展途上であるわけですが、将来的にはアジア市場、特にアセアン・中東圏を視野に展開したいと考えています。
そのために、マーケティングプロジェクトのようなカリキュラムを通して、日本だけのビジネスにとらわれない発想をもつ人材を育成していきたいですね。
ネオマーケティング担当者から
エンドユーザーを理解する「マーケティング思考」を大事にされているエア・ウォーター・ゾル社は、ODM(受託製造)の領域を超えた存在だと思っています。
新入社員が、ブランドメーカーの方と同等のレベルの知識だけでなく、「マーケティングの考え方(思考)」を腹落ちし通常業務にも生かせるようにという難易度の高いオーダーですが、毎年色々なテーマをベースにその時々のトレンドを取り入れるなど、私自身も大きく成長させて頂いております。
知っている(知識)から使える(経験)という流れのハードルが高いからこそ、エンドユーザーを知るためのリサーチの重要性、調査設計や活用方法まで、詳しくお話させていただいています。
今後は過去の受講者と新しい商品開発を行なうために、更なるマーケティング支援を実行して参ります。
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