年代別の意識の違いからみえるこれからの時代のジェンダー観
生活者起点のリサーチ&マーケティング支援を行なう株式会社ネオマーケティング(所在地:東京都渋谷区)は、学生のアカデミックリサーチを積極的に支援しています。今回、宮城大学の「経営情報管理」(担当:大嶋淳俊先生)を受講した学生と、2021年6月15日(火)~2021年6月16日(水)の2日間、全国の15~69歳の男女を対象に「日本社会のジェンダー」をテーマにしたインターネットリサーチを共同で実施いたしました。報道の一資料として、ぜひご活用ください。
<調査概要>
調査の方法:株式会社ネオマーケティングが運営するアンケートサイト「アイリサーチ」のシステムを利用したWEBアンケート方式で実施
調査の対象:全国の15~69歳の男女を対象に実施
有効回答数:1000名
調査実施日:2021年6月14日(月)~2021年6月15日(火)
調査立案者:宮城大学 事業構想学群 3年次1名
「日本社会のジェンダーに関するアンケート」 学生M.T.さんからの感想
◆本企画の参加動機について
昨今、政治家の女性軽視的発言が問題に取り上げられていたり、LGBTQの人々のパートナーシップや結婚に対する社会システムに疑問が呈されていたりと、性に対する世の中の考え方が変化してきています。一方で、実生活ではいまだに「男なら○○」「女なら○○」などのネガティブな偏見を感じることや、無意識下に刷り込まれてしまった自分自身への「性に対する枠」を感じることがあります。今回のこの調査を通して、私は実際日本の多様な世代の人々が、性に対する諸問題をどのようにとらえているのかという実情を知り、これまで見逃していたり受け入れてしまったりしていた点に疑問を持つきっかけになればと思い、この企画を考えました。
◆結果を見ての所感
自分自身が想定していたよりも、ジェンダーに対するとらえ方が柔軟になっていることに驚いたと同時に、やはりまだ年代ごとの認識の違いはあるということを実感しました。性別にとらわれすぎることなく、日本のジェンダー観を変えていくきっかけが詰まっているように感じています。
◆調査全体、本企画に参加したことに対する感想など
本調査を通じて、1000名にアンケートを行うという貴重な体験をさせていただきました。自分自身が知りたいことを正しく伝わるように、質問事項を吟味したり構成を考えたりすることは容易ではないと感じました。この経験を今後の学習活動やゼミでの活動に活用していきたいです。この調査にご尽力くださったネオマーケティング様をはじめ、関係者の皆様に深く感謝申し上げます。
まず、日本社会の男女平等についてどのように思うか伺いました。結果、全ての年代において女性の方が男性優位だと思っていることがわかりました。男性に関しては、年代が低いほど男性優位だと思っていない、ということがわかりました。
【学生コメント】
日本が男性優位と感じるかどうかについて、男女の認識の差がはっきりとみられることがわかりました。しかしながら、他年代と比較したときに30代女性だけ男性優位と感じる人の割合が少ないという点に興味を持ちました。
男性優位ととらえている女性が多い一方、男性の認識は同程度ではないということから、まずは認識の相違を埋めていくところから始める必要があると思いました。
世界経済フォーラム(WEF)が2021年3月30日に発表した、各国のジェンダー不平等状況を分析した「世界ジェンダー・ギャップ報告書(Global Gender Gap Report)2021」によると、日本は男女平等の面で世界153カ国中120位だという報告がされています。
このことについて、意見を伺ったところ、120位という順位が妥当だという方が6割以上となりました。
【学生コメント】
世界ジェンダー・ギャップ報告書による日本の順位を妥当だと感じている人が多いことがわかりました。153か国中120位が妥当であるというネガティブな現状を変えていく必要性を感じました。
一方で、男女関係なく年代が上がるごとにこの順位が「低い・低すぎる」と感じている人の割合も増えているという点が興味深いと感じました。
普段の日常生活において、違和感や疑問を感じるジェンダーに関する発言や言葉遣いについて、意見を聞きました。まず、「男だから・・・」や「女としての・・・」といった、性別を強調するような発言や言葉遣いに対して疑問を関じる方は、男女ともに10/20代に多いということがわかりました。またすべての年代において、男性よりも女性の方が疑問を感じると回答しています。
次に、男性の子育て関与が推奨される社会の中で注目されるようになった、子育てに積極的に取り組む男性を指す「イクメン」という言葉について、聞きました。この「イクメン」という言葉に対して、疑問を感じると回答した女性の割合が、特に10/20代、30代で高く、5割以上が疑問を感じると回答しています。
肯定的に使われることもある「イクメン」ですが、注目の背景には、男性が育児に関与することが特別だと認識されている社会の背景があるのではないでしょうか。
次に「女性の社会進出」という言葉について聞きました。疑問を感じるという方は、女性10/20代、30代のうち5割が疑問を感じると回答しており、他と比較して高い割合となっています。この言葉にも、そもそも女性の就業が様々な点で制約を受けている日本社会の様子が伺えます。
【学生コメント】
近年、「イクメン」という言葉は男性が育児をすることは特別であるということを暗喩しているということを耳にする機会が多かったのですが、若い人ほどこの言葉に疑問を持っていることがわかり、若い世代の育児に対する観点も変化してきているのではないかと思います。
全体的に、若い世代がジェンダーに関する言葉への違和感を敏感に感じ取っていることがわかり、関心が高い世代から多様な認識の存在を推し進めていくことが重要だと思います。
家庭内における、男女の不平等を感じた経験をお聞きしました。「家事」「収入」「親戚との付き合い」について、男女で大きく割合が異なっています。特に「家事」については、女性が最も不平等を感じるところのようです。
【学生コメント】
家庭内で感じる男女不平等について、想定よりも「慣習・しきたり」において不平等を感じた経験があるという人が多く、驚きました。家事に関しては、やはり女性のほうが不平等を多く感じ取っているということも明らかになったため、家庭内での不平等を改善していくことも早急に取り組むべき課題であると考えました。
職場での、男女の不平等を感じた経験をお聞きしました。「給与・待遇」「昇進のしやすさ」については、女性の方が多く不平等を感じている一方で、「仕事の重さ」「仕事の量」「上司からの厳しさ」等は男性の方が多く不平等を感じると回答しています。職場では男女どちらも、それぞれがおかれている状況から不平等を感じてしまう構図となっています。
【学生コメント】
仕事においては、場面は違えど男女ともに不平等を感じた経験があるという点に驚きました。仕事という場面において起きているのは男女による不平等というよりも、立場による不平等が大きいのではないかと思いました。
男女で区別することなく、職場での不平等解消がジェンダーに関する日本の現状を変える一つのステップになりえると考えています。
職場における有休、出産育児休暇、更に女性の役員登用などについてお聞きしました。
「男性の出産育児休暇取得」については、進んでいると回答した方が2割程と、まだまだ推進段階であることがわかります。「女性の正社員雇用」について進んでいると回答した方の割合も5割を切る結果となり、役職者や役員登用は更に低い割合となっています。
企業規模や業種、職種によっても差はあるでしょうが、生活者の実感としてもまだ進んでいない領域が多くありそうです。
【学生コメント】
有給取得、役割に関する面ではまだまだ制度や文化が整っていないのが現状であると感じました。職場での制度を整え推進していくことはもちろんですが、その制度を積極的に活用したい、利用してもいいと思える環境づくりを進めていくことが必要であると思います。
男女の外見に関するそれぞれの考えについて、意見を伺いました。
全体で見ると、男女関係なく、したい人がメイクをすればいい、男女関係なく好きな格好をすればいい、人の外見について他人が言及するべきでないといった、「男女」という考え方に縛られず、個人が望むようにすればいいという考えが支持を集めているように思えます。
次に、それぞれの結果をいくつか性年代別に見ていきます。
新型コロナウイルスの影響によるマスクを着用した生活やお家時間の増加により、化粧を巡る環境は大きく変わりました。「女性がマナーとしてメイクをするべき」という考えについて、どのように思われているのでしょうか。全ての性年代において、そう思わないと回答した方の割合が、そう思うと回答した方を上回っています。特にその傾向が強いのは、女性10/20代、女性60代、男性40代、男性60代でした。
昨今、男性メイクも特に若い世代を中心に注目を集めています。男女関係なく、したい人がメイクをすればいいという考えについて、特に女性の肯定的な回答が目立ちます。10/20代の女性については7割が肯定的です。
男女関係なく好きな格好をするべきという考えについても、全年代において、男性より女性の方が肯定的だという結果になっています。特に、10/20代の女性の7割が肯定的です。
【学生コメント】
男女問わず、見た目や格好に関する捉え方は寛容になってきていることを強く実感しました。外見に関しては、男女という性別を超えて自分自身の好きなようにして良いという意識が浸透してきているということなので、ここからジェンダーへのとらえ方の多様性を推進していくことができるのではないか、ここに着眼点が隠されているのではないかと感じました。
家庭において、ジェンダーが意識される場合がありますが、それぞれの考え方についてはどのように思われているのでしょうか。
まず、男性が家事や育児を手伝うべきだ、という意見について、全体的に肯定的な方の割合が多いようです。男性30代は他と比較してやや少ない割合となっています。
一方で、「手伝う」というワード自体が、家事・育児の主担当が女性だという前提に立っている、という意見もあります。
子育てにはやはり母親の方が向いているという意見については、男女ともに高い年代の方が肯定的な割合が多く、特に男性の50~60代で肯定的な割合が多くなっています。一方で、否定的な割合は、女性の10/20代~40代で比較的多くなっています。
【学生コメント】
子育てに関する、やはり母親(女性)のほうが子育てに向いているという意見について、年代が上がるほどこの意識が強まるのではないかと想定していました。結果としてはその通りになりましたが、男女問わず40代と50代の間を境に、はっきりと意識が変わっているように感じました。若い世代になるほど、子育てに関するジェンダー問題についての意識が強く変化しているように感じられました。
■この調査のその他の質問
・自分自身の性別についての気持ち
・学校教育・教育現場で感じた男女の不平等
・就職活動で感じた男女の不平等
など
■引用・転載時のクレジット表記のお願い
※本リリースの引用・転載は、必ずクレジットを明記していただきますようお願い申し上げます。
<例>「生活者を中心にしたマーケティング支援事業を提供する株式会社ネオマーケティングが実施した調査結果によると……」
■「ネオマーケティング」
URL:https://neo-m.jp/
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