自論

モデレーションで「なにそれ!」を引き出す。|中村知佳|自論

作成者: 株式会社ネオマーケティング|May 20, 2024 7:19:00 AM

はじめに

ネオマーケティングで活躍するスペシャリストの、「現在地とこれから」を紹介するシリーズ。今回はモデレーターとして活躍する中村知佳さんに、今取り組んでいることや目指していること、仕事にかける思いを聞きました。

 

定性調査がプロジェクトのスピードを速める。

 

――最初に、中村さんの「現在地」から伺います。今やっていることを聞かせてください。


私の専門は定性調査です。「モデレーター」といって、インタビューを行って得た情報から、企業のマーケティング活動を支援する仕事です。ただインタビューをするだけではなく、お客様の課題を念頭に置いたうえで、どのような方にどういう聞き方をすれば必要な情報を得られるのか、といった事前の調査設計も行います。

以前は営業をしていたのですが、その頃から売上の9割はインタビュー案件でした。当時は社内に定性調査のスペシャリストがいなかったため、外部のモデレーターさんに頼んで仕事のイロハを教えてもらいながらスキルアップしてきて、今に至ります。

 


――モデレーターという仕事を知らない人も多いと思います。中村さんにとって、どのような仕事なのでしょうか。


モデレーターとインタビュアーが同じ仕事だと勘違いされることが多いのですが、実は必要とされるスキルはまったく違います。
モデレーターの仕事は、次のマーケティング活動に繋げるための情報を引き出すことです。お客様のマーケティング目的、マーケティング課題、調査目的、調査課題を理解したうえで、インタビューのフローに組み込みます。また瞬発力も必要で、インタビュー中の発言でどこを深堀りするか瞬時に判断して、進めなければいけません。商品知識に加えて業界に関する深い理解も必須です。

モデレーターが行う調査は「定性調査」に分類されます。アンケートなどの「定量調査」で気付けないポイントをすくい上げたり、「データでは出ているけれど、どうしても確信を持ちきれない」ときに実施して、定量調査の結果を確かめる目的で行うこともあります。

定性調査を行うことでアウトプットの粒度が上がり、お客様も自信を持ってスピーディに次のアクションに進めるようになるのです。

 

今の時代だからこそ、定性調査の必要性は高まっている。

 

―――お客様からはどのような相談を受けることが多いですか。


新商品開発のアイデアや施策に関連するご相談が多いですね。
「コンセプトをブラッシュアップしたいが、どこをどう変えたらいいのか」「カスタマージャーニーを把握したい。何がトリガーとなって商品を欲しいと思い、どのような情報が購入の決め手になるのか」などです。

私が思うに、今の日本で売られている商品に悪いものはありません。必要な最低限の品質は満たせていて、ネットがあればどこでも手に入ります。その中で、より自分にとって良いものを取捨選択できるので、消費者にとっては便利な世の中ですが、事業会社にとっては厳しくなっているのではないでしょうか。

 

消費者に選んでもらうための、今までにない革新的な商品を開発するには、莫大なコストと時間がかかるので、すべての企業がそれだけに注力し続けることは難しいと思います。とは言っても、表層的な意見からの機能面のリニューアルは「やりつくしてしまった」感があり、「次、何をすればいいんだ」となっている会社が多いのです。だからこそ、「今まで気付けなかった価値やヒントを消費者インタビューで見つけられるんじゃないか」という期待感から、インタビュー調査のご依頼が増えてきているのだと思います。

 


――今だからこそ定性調査の重要性が高まっている、と。


はい。定量調査が企業の意思決定において重要であることは言うまでもありませんが、定量調査が万能であるかというと、そうではありません。アンケートの文章表現がすこし違うだけで調査結果に影響しますし、「なぜ回答者は、この回答を選んだのか」といった背景はわかりません。
定性調査は、定量調査では知ることができない部分を掘り下げていき、企業はもちろん、回答者ですら気付いていなかったニーズをすくい上げることができるのです。

「なにそれ!」を見つけるのがモデレーターの仕事。

 

――お客様が喜んでくださるのは、どのようなときでしょうか。中村さんが印象に残っている場面があれば教えてください。

海外のお客様で、グループインタビューを任せていただいたことがありました。本来グループインタビューは、対象者間同士の発言で刺激しあうことで、会話を活性化させていくことが重要とされるため、モデレーターが話す順番を決めてしまったり、会話に多く介入することはよしとされないのですが、通訳を介してインタビューすることになったため、通訳が変換しやすい日本語を選んだり、通訳しやすいよう一人ずつ順番に発言するファシリテーションをしたりしたことが評価されて、「また中村さんがいいです」と喜んでいただけました。細部まで意識してモデレーションをした努力が評価された実感があり、うれしかったですね。

 


――難しい仕事だと思いますが、どのようなところでやりがいを感じていますか。


インタビューを通して、「なにそれ!」という要素を引き出せたときにやりがいを感じます。それこそがモデレーターの仕事だと思うからです。

私はどんな人でも、他人が驚くようなおもしろい要素を持っていると考えています。多くの人が「自分は普通な人間だ」と思っているのですが、他人から見たら「なにそれ!」と驚かれる要素を絶対持っているのです。

たとえば、とあるお菓子メーカー様で、お菓子に関するインタビューをしたときでした。グミやキャンディーならまだしもおせんべいって、電車の中では普通食べません。音が大きいからです。
しかし実は、電車の中でも食べる人がいるんです。小さく割って、口の中で転がせてふやかしてキャンディーのようにして食べるんだそうです。「なんでそこまでするんですか?」と聞くと、「どうしてもお腹が空いたときにおせんべいはお腹にたまるし、この食べ方だと音がでないうえに、お米の風味を鼻から感じられて美味しい」と返ってきました。

関係者からすると「なにそれ!」で、そんな方法でおせんべいの良さを感じている人がいるなんて、思いもしなかったそうです。商品開発のヒントとして、貴重な情報をすくい上げることができた瞬間でした。

「調査の先」を提案・実行できるのがネオマーケティングの強み。

 

――中村さんが思う、自分の強みというか、お客様に喜んでもらえている理由があれば聞かせてほしいです。


営業経験だと思います。

モデレーターという仕事には、高い専門性が求められます。しかしこれといった資格はないので、どれだけ専門領域に強くなれるか、つまり場数が必要になってきます。多くのモデレーターは専門領域に特化していき、結果として得意不得意が出てきますし、人によって合う・合わないも出てきます。

私の場合は、お客様に合わせてモデレーターをアテンドしてきた経験が豊富なので、「このお客様はどういうモデレーターを求めているのか」が感覚的にわかるのです。営業としての経験が、お客様に合わせたモデレーションにつながっていると感じています。

あと私だけの強みではないのですが、ネオマーケティングが「調査の先のアクション」を提案できるのは大きな強みです。どうしてもモデレーターだけでは、次のアクションを提案できても無責任な形になってしまいます。次のアクションを実行するのは自分じゃないですし、具体的な施策については専門外だからです。

 


――ネオマーケティングだからこそ生み出せる価値がある、と。


その通りです。ネオマーケティングは、お客様が次のアクションができるように、どんどんアイデアを形にしていくことができます。これはネオマーケティングのスペシャリスト集団がいるからこそ実現できていることだと思います。また、定量調査と定性調査の複合はネオマーケティングだからこそできることです。

 

今が一番、おもしろい。

 

――ここからは中村さんの「これから」についてお聞きしたいです。「これをやっていきたい」「こうなっていきたい」というものがあれば教えてください。


大きく、2つあります。

1つ目は、定性調査の価値を一人でも多くの人に知ってもらうこと。
定量調査は結果が明確で、調査プロセスやシステムも型があります。しかし定性調査は「それって少人数の意見だよね、真に受けて大丈夫なの?」となり、成果として形になるイメージが湧きづらいのです。実体験を通して「そんなことはなかった!」と感じていただける機会を、もっともっと作っていきたいです。

2つ目は、「超スペシャルモデレーター」になることです(笑)。
定量調査も定性調査もわかったうえでモデレーションができれば、お客様に提供できる価値はとても大きなものになります。
AI技術が発展していく中で、もしかしたら定量調査はAIが担うようになるかもしれません。しかし人の心を洞察して言葉にするレベルにAIが追い付くのは、まだまだ先でしょう。だとしたら、定性調査の重要性は今後更に高まっていくはずです。

 


――さいごに、今率直に感じていることを教えてもらえますか。


マーケティングでは次々に新しい考え方が生まれていて、10年前に当たり前だった概念が、今では使われていなかったりします。一生勉強し続けなきゃいけないのが、マーケティングのおもしろいところです。

お客様はジェット機のようなスピードで走っていて、私は並走しながら考えている感じです。プレッシャーは大きいですが、それを乗り越えて新たな発見をお客様に提供できれば、イノベーションが起きます。そのプロジェクトにネオマーケティングが参画していることが凄いと思いますし、自分が関われていることが光栄です。

ネオマーケティングに入社して10年が経ちましたが、今が一番「マーケティングっておもしろい」と感じています。

 

プロフィール

インサイトリサーチG サブマネージャー
中村 知佳

金融業・広告代理店・製造業など、様々な業界にてリサーチを実施。中でも定性案件を得意とし、調査設計・モデレーターの経験もある。副業でイベントの司会やラジオのレポーターとしても活動中。